弁当やかばん、女性の靴などが床に散乱し、血痕のような染みも見える。そこへ「犯人は確保されました」という車掌のアナウンス。乗客が投稿したネット動画から現場の生々しさが伝わった▼9日夜、東海道新幹線のぞみで若い男が刃物で乗客1人を殺害し、2人に軽傷を負わせた。突然の凶行だったという。男と隣り合う席の女性2人が切りつけられ、かばおうと止めに入った男性が首や胸などを刺されて亡くなった▼大勢の乗客が別の車両に逃げ込み、パニックになった。高速で走る新幹線は、何重もの鉄道事故防止技術を誇っているが、狭い車内は避難場所のない密室だ。のぞみでは3年前、ガソリンを使った焼身自殺もあり、火災の煙に巻き込まれて乗客1人が死亡し、28人がけがをした▼「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」と容疑者が供述しているという。新幹線の安全を信じて旅をする人々を狙ったと思うと、恐怖を覚える。そんな凶行を繰り返させない手だてはないのか▼全国で1日に80万人以上が利用する新幹線。空港のように手間暇の掛かる手荷物検査を行うのは非現実的だ。ならば「改札で危険物を検知する高速センサーの開発を」と提案する専門家もいる。新幹線の便利さ、快適さと両立できる策に知恵を絞りたい。(2018.6.12)