沖縄を訪ねた折、地元の知人が案内してくれた。普天間、嘉手納など米軍の飛行場や基地、演習場が先々に現れる。県域の7割を占める異様さに驚き、住民は基地に生活、経済を依存せざるを得ないのかと問うと、「それは違う」と言われた▼目にしたのは那覇市新都心や近郊の北谷(ちゃたん)町のにぎわい。米軍からの返還地にできた街だ。雇用者や税収、生産額は前者が返還前の約30倍、後者は約100倍という。「自立的な開発に勝る振興はない」と聞いた▼基地の負担軽減、県外移設を求め、普天間飛行場の辺野古移設計画で政府と対立した翁長雄志知事(67)が逝った。73年前の沖縄戦犠牲者の「慰霊の日」だった6月23日、闘病中の姿を式典で見せた▼「新基地を造らせないという私の決意はみじんも揺るがない」。膵(すい)がんに耐えての演説は鬼気迫った。沖縄戦で身内を失い、「生活の戦いのため」保守の政治家に。辺野古問題で政府に翻弄(ほんろう)された経験から4年前「オール沖縄で対抗を」と訴え、知事選で圧勝。反対運動の象徴だった▼米兵が起こす犯罪も地元で絶えない。「例えばドイツでは米軍基地を警察が捜査できる。ここでは入ることもできない」と知人。日米地位協定の壁に差別感を抱く県民は多いという。翁長知事を支えた怒りの根の深さだ。(2018.8.10)