1日に2升の酒を飲み、200本のたばこを吸った。野武士のような風貌で毒舌。棋風は独創性に富んでいた。将棋の故升田幸三さん。名人に香車落ちで勝った不世出の棋士と言われる▼「勝負はその前についている」という名言を残した。自伝『勝負』で、日頃の訓練はもちろん、心身の調子を整え、技術を十分に発揮することが大切と説いた。自身は対局前に構想を練ることに苦心したという▼きのうの自民党総裁選も勝負は投票前に決していたのだろう。前評判通り、安倍晋三首相が連続3選を果たした。「1強政治」の強みを発揮し、国会議員や業界団体の支援を受けた▼石破茂元幹事長も善戦した。安倍氏への批判の裏返しと言える。各報道機関の世論調査では安倍内閣の不支持の理由は「人柄が信用できない」が多い。それを意識してか、安倍氏は「謙虚に丁寧に政権運営に当たる」と繰り返すが、言葉だけが上滑りして心に響かない。論点をすり替える「逃げ」の姿勢が目立つ▼升田さんによると、将棋には「まやかしの手」がある。負けそうな時に苦し紛れに打つ手で、未熟な人にはすごい手に見えるが、上手な人には通じない。安倍氏の任期は3年。まやかしと言われないよう、まずは真っ向勝負でモリカケなどの疑問に答えてほしい。(2018.9.21)