「この騒音は何?」「音楽の革命だ」。1913年5月、パリの劇場は騒然とした。ロシアの作曲家ストラビンスキーのバレエ組曲『春の祭典』の初演。激しいリズムがつくる独特の世界が会場を二分した▼批判派が多く、公演は失敗に終わった。今、『春の祭典』は現代音楽の金字塔という評価を得ているのはご存じの通り。何かを変革する時、称賛と批判の声が出るのはよくあることなのだろう▼最近、経済関連のニュースで変革という言葉を目にする。「100年に一度」の大変革期を見据えたトヨタ自動車とソフトバンクの次世代車分野での業務提携は期待の声が多いようだ。世界で競争が激化する中、自動車と通信業界の「両雄」が手を結び、生き残りを目指す▼経団連が企業の採用日程を定めた指針を廃止する方針を決めたことは戸惑いが少なくない。方針の背景には、現行の新卒一括採用ではグローバルな人材争奪戦に太刀打ちできないという危機感がある。だが大学からは「大学は就職のための予備校ではない」との批判が上がる▼経済界が求めるのは語学、専門性、教養を備えた人材。企業の採用競争が過熱し、それらの勉強がおろそかになっては本末転倒。学生本位で考えないと、「この改革は何?」ということになりかねない。(2018.10.11)