夏冬のオリンピックの度に憤りを覚えるのが、続々と発覚する選手の薬物使用。薬の力を借りてまで偽りの栄光を手にしたいのか。2020年東京五輪の組織委は「ドーピング・ゼロ」を掲げるが、検査員の人手が足りず募集、訓練に追われる▼競技大会で初の薬物検査が行われたのは50年前のグルノーブル冬季五輪。だが、薬物検査の歴史はもう半世紀古く、場所は欧州の競馬場だった。多額の賭け金が動くこの世界でも違反行為は絶えない▼競馬ファンを嘆かせる事件がまた起きた。岩手競馬の盛岡、水沢両競馬場で7月から先月末まで3度も、出走後の馬から禁止薬物が出た。いずれも同種の筋肉増強剤。県競馬組合は傘下の全頭を検査し、監視カメラや警備員を増強する中での再々発▼レース賞金は少額で、誰がなぜ、どう薬物を使ったのか不明。そんな謎以上に事件の影響は甚大だ。岩手競馬の信用失墜に加え、レースは当面休止となり減収必至。競馬存続も危うい▼組合は膨大な赤字のため11年前、県と盛岡、奥州両市から再建へ330億円も融資を受け、返済途上だ。「もし経営が赤字に陥れば競馬は廃止」が条件とされ、達増拓也知事も8日の会見でその可能性に触れた。競馬場や厩舎(きゅうしゃ)で働く人々もファンも、推移を見守るほかないのがつらい。(2018.11.9)