忘れがたいのが22年前のアトランタ五輪、サッカーの日本対ブラジルの試合。圧倒的に強い相手の28本ものシュートを神懸かり的な奮闘で防ぎ、勝利に導いたのがキーパー川口能活選手。炎の守護神と称された▼「やるべきことを全うした」「余力はあるが悔いはない」。14日に引退会見があり、晴れ晴れとした顔だった。Jリーグと日本代表で活躍後、43歳になる今季も下部のチームでプレーし続けた。「出場は減ったが、サッカーは喜びと再認識できた」▼どの競技者も、記録や勝利への戦いより難しいのが自らの進退の決断か。「もう十分だ」「まだできる」との葛藤の苦しみは、周囲の誰も助けられない。どんな心境でいるだろうと思う人が、大相撲の横綱稀勢の里関▼「一人横綱」の責任を担った九州場所で初日から4連敗した。横綱では87年ぶりの不名誉な事態で、きのう休場届けを出した。けがを理由に8場所休んだ後、先場所10勝して心機一転、復活優勝を狙うはずだった▼「ぼろぼろになるまで頑張れ」「あまりに惨め」「潔く引退を」。ファンの声がテレビやネットにあふれる。今の大相撲で唯一の日本人横綱として期待され、応援される身。それゆえの重圧、苦悩、迷いもあるのか。進退はどうあれ、「相撲は喜び」と語る笑顔を見たい。(2018.11.16)