「わしは丹波篠山(ささやま)の生まれや」。兵庫県篠山市出身の知人の口癖で、飲めば古い城下町の風情を自慢し、盆踊りのデカンショ節を歌い、土産は名物のクリの酒。その篠山市が住民投票をして「丹波篠山市」へ改名を決めたという▼観光名所なのになぜ、と思った。丹波篠山は篠山市を中心とする地方。近隣に後発の丹波市が合併で生まれ、「紛らわしく、特産品のクリ、黒豆の注文や観光客が流れる」との声が住民投票を後押ししたと聞く▼篠山市は「篠山に住もう帰ろう室」を設け、移住、帰農も全国に呼び掛ける。地方の人口減の時代、他の街はライバルだ。「名を売ろう」と激しくなる競争が、全国自治体の「ゆるキャラグランプリ」の人気投票にも現れた▼日本一を狙った西日本の3市が、職員らにネットで組織票合戦をさせたという。「一丸の応援は当たり前」と市長の1人。昔、公害発生地や炭鉱町として知られた市もあり、ゆるキャラでイメージを一新したかったか▼国の地方創生の交付金で今、どの自治体も地元をPRする動画作りに忙しい。観光地をドラマ仕立てで紹介したり、地味な土地柄を面白おかしく伝えたり、ネットでの視聴数を競う。話題と客を呼べば成果だろうが、本当の地元の魅力は何か、見失われそうで気掛かりだ。(2018.11.20)