日産自動車のカルロス・ゴーン代表取締役会長は、いわき市のいわき工場を「日産のシンボル」と呼ぶ。東日本大震災で大きな被害を受けたが、2カ月足らずで復旧。破綻寸前の窮地から再建した会社を象徴しているように思ったという▼自著『国境、組織、すべての枠を超える生き方-私の履歴書』(日本経済新聞出版社)で当時を回想。「どの従業員も災害で受けた心の傷や痛み、余震の恐怖と向き合いながら目覚ましい働きをした。『絆』をわれわれもかみしめた」と述べている▼そんな被災地に寄り添う姿を見せたのは、あくまで表の顔だったのか。金融商品取引法違反の疑いでゴーン容疑者が逮捕された。5年間で約100億円の報酬を受け取ったのに、有価証券報告書に約50億円しか記載しなかった疑いという▼少なく記載したとされる報酬でさえ、株主から高額と批判された。虚偽報告はさらなる批判を避けるためだったのか。大胆なリストラを断行し、「コストカッター」の異名を取った改革者。その素顔は単なる拝金主義者なのかもしれない▼「再生策にどれだけ多くの痛み、犠牲が必要となるか。痛いほど分かる」「透明性があれば会社は信頼を得ることができる」。ビジネスマンに愛されたゴーン語録は、もう空虚にしか聞こえない。(2018.11.21)