「迷ったら前へ出ろ。後悔はずっと後でいい」。プロ野球東北楽天の岸孝之投手(仙台市出身)が2年前、パ・リーグの西武から移籍した際、動かされたのが故星野仙一副会長のこんな言葉だった。今季11勝を挙げ、最優秀防御率にも輝き、ゴールデングラブ賞に選ばれた▼人は岐路に立つ時、どんな人生の選択をするのか。移籍当時31歳の岸投手は「野球人生がいつ終わるか考えた」と語り、「地元に戻るのは今。東日本大震災の被災地の力になりたい」と心情を吐露した▼東北で新たな挑戦を目指す選手の名も挙がった。パ・リーグで優勝した西武の強打者、浅村栄斗内野手(28)。大活躍の後にフリーエージェント(FA)宣言をし、他球団の誘いが相次いだ。総額20億円余りの複数年契約話が飛び交う中、選んだのが最下位の東北楽天という▼常勝と称される強豪球団も、より好条件の契約も決断の選択肢にあったそうだ。が、「新しい環境で必要とされ、成長したい」との自身の思いが勝ったと報じられた▼いかに輝かしい実績の主でも、移籍は冒険だろう。遠征試合で仙台を訪れ、負けても応援の声が消えず、敵の好プレーにも拍手が起こる球場の温かさを、浅村選手は感じたに違いない。新しい野球人生に東北のファンもまた選ばれたと思いたい。(2018.11.22)