「そばを手繰る」という。すすって食べることだが、昔の江戸っ子がそばを縄に見立て、豪快で粋な表現をした。「すする」が似合わないのは野趣あふれる東北のそばも同じ。新そばの季節、仙台の雑誌『りらく』は「蕎麦(そば)を手繰る小さな旅」という特集を組んでいる▼そばを水だけで練り、布を裁つように切る。会津の名物「裁ちそば」を福島市で食べられる店がある。名取市の農家食堂では自家栽培の野菜天ぷらのそばが目玉。「宮城と隣県の魅力発見に知恵を絞ってきた」と編集に携わった浅井宣夫さん(78)▼毎月5万部を発行するシニアの情報紙りらくが20周年を迎えた。創刊者で初代編集長を務めた浅井さんは「当時は団塊世代が定年に近づき、新しい人生を探し始めたころ」。豊かな生き方をしたいという思いに寄り添う雑誌を発想した▼「地方出版では無理」と言われた。が、共鳴する編集者や書き手が集い、人脈を持ち寄り、桜、紅葉など季節の特集を多彩に打った。地元発の新鮮な情報も増え「読者と一緒に作る雑誌に育った」▼肩の力を抜いてリラックスを-が題号の意。今も名誉編集長として現場に携わるが、後進が育ち、やっと題号の心境になれたという。福島県三島町出身の会津人で、「私も新そばに誘われて旅に出たいんです」。(2018.11.24)