北海道と沖縄を直線で結ぶより長い距離を歩いたかもしれない。中米諸国から米国を目指した移民集団である。貧困や犯罪集団の暴力から逃れるため、大都会での豊かな暮らしを夢見て数千キロを北上。国境で待っていたのは銃を構えた米兵だった▼「集団の中に犯罪者がいる。民主党は国境を開放しようとしている」。米共和党のトランプ大統領は先の中間選挙で移民集団を政争の具に使った。昨日の本紙には催涙ガスから逃れようと双子の娘の手を引いて走る女性の写真が載った。この親子が犯罪者に見えるのだろうか▼場所は変わって、台湾では日本の食品が政争の具に使われた。住民投票で、東京電力福島第1原発事故後に続いている福島県などからの食品輸入規制継続が賛成多数で決まった。解除は当面困難になる。同時にあった統一地方選が影響した▼与党の民進党政権が規制緩和に動いたのに対し、野党の国民党が反対し、住民投票を提起。与党時代は規制緩和を検討したが、野党に転落し、対応が一変した。日本は台湾から多くの観光客が訪れる身近な国なのになぜ? そんな思いが消えない▼政争の犠牲になるのはいつも市民。しかし、安全と分かってもらえるまで地道な努力を続けるしかない。それが不毛な政争に勝つ方法に思える。(2018.11.29)