健在なら99歳。浜のばあちゃんとして暮らしていたかもしれない。佐々木八重子さん。石巻市北上町十三浜の小指集落に育って、嫁ぎ先の半農半漁の旧家を切り盛りして66年前、33歳で他界した。その日記が刊行され、浜の貴重な歴史を伝える▼日記は1949年暮れ、「今朝は朝から餅のお支度で忙しかった」との一文で始まる。磯のノリ採り、はた織り、縫い物、タラ漁と行商、麦踏み、養蚕、男衆の酒飲みの世話など、毎日の出来事が淡々と続く▼愚痴は一つもない。雨の日は餅をつき皆で食べ、集落の女性の集いを楽しみ、結(ゆい)の作業日の好天を喜び、身内の祝い事に安らぐ。日記が終わるのは52年の旧暦元日。「今年もよい年であるよう」と祈りをつづり、4日後の出産時に急逝した▼孫である岩沼市の佐藤恵子さん(44)が、本家の仏壇にあったという日記を母親から渡されて読み、6年前からブログで紹介した。「浜の暮らしを愛した女性の思いを今に伝えたかった」▼東日本大震災の後、被災した十三浜で住民と交流する宮内泰介北海道大教授が「貴重な歴史遺産」と刊行を提案。地元有志が昔言葉を読み解いた。浜は復興途上だが「一日も早く昔の豊かさが戻ってほしい」と佐藤さん。ネットで「八重子の日記 北海道大」と検索し閲覧できる。(2018.12.2)