歴史が動いた。誰もがその目撃者になったのは1989年だ。自由を求める人々を閉じ込めていた「ベルリンの壁」が11月に事実上消滅。旧東ドイツ国民の民主化要求に共産政権が屈し、28年ぶりに西側への国境を開いた。壁を登って喜ぶ市民の姿は感動的だった▼第2次大戦後に共産圏とされた東欧諸国も続々と自立を宣言。分断から新生の時代に欧州を導こうと「冷戦終結」を表明したのが、当時のゴルバチョフ・ソ連書記長とブッシュ米大統領だ。12月3日のマルタ会談として記憶される▼旧ソ連も崩壊寸前だったが、残る超大国として勝者の振る舞いをせず、平和的な支援を選んだブッシュ氏の功績はノーベル賞にも値したと思う。冷戦終結から来年で30年となるのを前に94歳で亡くなった▼太平洋戦争では攻撃機に乗って撃墜され、九死に一生を得たという。経験に培われた冷静さは、マルタ会談翌々年の湾岸戦争でも発揮された。隣国を侵略したイラク軍を、多国籍軍による反撃を短期間にとどめて追い払い「世界の警察官」役を貫いた▼今のトランプ大統領を「ほら吹きだ」と嫌ったという。「自国第一主義」を掲げて強硬な要求を世界に押しつけ、露骨に武力を見せつけての威嚇も辞さない。そんなトランプ流外交をどう見ていたか。(2018.12.4)