『不死鳥の如(ごと)く』。福島県飯舘村の農家、菅野宗夫さん(67)から先日もらった純米酒だ。初めて聞く銘柄なのは当然。「村で取れたコメを原料に、今春世に出たばかり」と言う。福島第1原発事故から再起した村の思いを込め、売り出そうとしている▼菅野さんは同村佐須の区長。原発事故以来、隣町の避難先から自宅に通い、農業再生に取り組んだ。首都圏の研究者やサラリーマンらのNPO法人「ふくしま再生の会」が現地で支援してきた。活動の柱が稲作の復活だった▼事故翌年の2012年から自宅の水田から放射性物質を除去し、稲を育てる実験を重ねた。「白米は安全と分かり、食用だけでなく酒もいけると考えた」と支援者の1人、東京大教授の溝口勝さん(58)=土壌学=▼飯舘発の酒造り計画は昨年始まった。県が奨励する酒米「夢の香」を試験栽培し、収穫後、喜多方市の酒蔵に醸造を委託。届いた500本の酒は「舌の奥までぴりっと染みる、今までにない辛口」という。村内の道の駅や、再開した商店で販売中だ▼菅野さんらは今年、栽培面積を3倍の40アールに広げ、水管理を遠隔操作する装置も使って酒米を育てた。「豊作だった。去年より品質がいい」と菅野さん。復興の酒として飲んでほしい、と2年目の酒が誕生する来春を待つ。(2018.12.29)