広大な砂丘がある静岡県浜松市の海岸を訪ねた。ウミガメの産卵地で、市民が散策する自然の宝庫だ。が、いざ南海トラフ地震が起きれば、高さ15メートルの津波が押し寄せると想定されている。海岸に面した人口80万の街をどう守るか。やはり巨大防潮堤しか対策はないのか▼現地では5年前から、海岸沿いに延長17.5キロもの防潮堤造りが進んでいた。特殊な工法で土砂を固め、クロマツなどの防災林を育てている。東日本大震災の被災地に見る武骨なコンクリートの壁ではなかった▼「地元企業が300億円の資金を寄付し、市民の要望に合う緑の防潮堤が設計できた」。そんな話を市の防災学習センターで聞いた。災害の知識や教訓を伝承する施設で、廃校舎を再生して先日開所した▼自分の地域がどんな災害に遭う恐れがあるか、家具類もいかに凶器と化しやすいか、災害の瞬間や被災後に何が起こるか-。仮想映像や避難所のセットもあり、小中学生らに活用してもらうという▼「生きた学びにするため、被災地の人々を招きたい」。センターの講座を企画する原田博子さんは言う。主宰する子育て支援NPOの活動で、東北をはじめ各地の被災者を応援してきた。「みんなの経験を共有しなければ。そこから新しい備えの知恵を全国に発信したい」(2019.1.6)