日本に国際化の時代を告げたのは1964年の東京五輪。「外国の客を迎える大ホテルが次々と東京に建ち、新人ホテルマンの自分も英語を覚えた」。当時「金の卵」だった福島出身の男性の言葉だ。ただ日本人の生活は貧しく、外国は遠いかなただった▼そんな時から海外への憧れを広めたテレビ番組がある。日曜朝、映画『八十日間世界一周』の音楽で始まった『兼高かおる世界の旅』。90年の終了まで約30年、案内役だった旅行ジャーナリスト兼高かおるさんが90歳で逝った▼女学校時代から英語を学び、東京の英字新聞記者だった58年、国際線を乗り継ぐ「早回り世界一周」の新記録に挑んで成功。その行動力が名物番組誕生につながる。どの国でも常に車の助手席から、好奇心に触れた場所や人に飛び込んだ▼米国ではケネディ大統領にアポなしで面会し、スペインでは大画家ダリに歓待された。番組取材で巡った国は150を数え、「国際化は、外国も日本も両方知ってこそ育つ」との思いを伝え続けた▼日本人の海外旅行者は今、年に1700万人余り。外国人の訪日客は年3000万人を超えた。ネットやメディアも世界を狭めた。だが、人と人が言葉や境を超えて知り合う真の国際化は育っているのか。兼高さんはそう問うている気がする。(2019.1.11)