人に危害を及ぼす恐れのある存在として、あちこちに出没するクマへの注意喚起がこのところ日常的なことになってしまった感がある。秋田県では昨年、県全域でツキノワグマ出没警報が6月下旬から4カ月間続いた。秋田市中心部から程近い場所に姿を現したこともあった▼人間社会は以前は山中に生息するクマとすみ分けを成り立たせていた。開発がクマの生息域を脅かし、少子高齢化などで山里の手入れが行き届かなくなってくると、今度はクマが人里に迫る構図は、時間軸も絡めた社会の断面を映し出す▼秋田県立博物館で23日まで開催中の企画展「キムンカムイとアイヌ」は、人間とクマの共生のありようを問い掛ける。アイヌ語でクマは「山にいる神」を意味するキムンカムイと呼ばれた▼会場に記された「アイヌはクマを恐れると同時に愛着を感じ、敬意を持って接した」とのメッセージが主題を伝える。秋田の阿仁マタギらもクマを恐れ敬う精神性を宿し、儀礼や規律を守りながら関係性を保ってきた▼くまくま園(北秋田市)の小松武志園長は、元をたどれば決して積極的に出没しているわけではないとクマの心理を説く。人間社会が招き寄せているとすればなおさら、無用の摩擦を避けて双方が折り合える道を見いださねばなるまい。(2019.1.21)