遙(はる)かクナシリに 白夜はあける 『知床旅情』の歌詞を胸に、北海道・知床半島の峠を車で上った時のこと。国後島の姿が眼前に大きく現れ、旅のロマンも吹き飛んだ。狭い海の対岸が「他国」という現実の理不尽を突きつけられて▼日本固有の領土で第2次大戦直後、旧ソ連に占領され、ロシアが実効支配する北方領土。政府が返還を求める4島のうち色丹島の近況を聞いた。東北の漁業復興支援にも携わる濱田武士北海学園大教授が、ビザ無し交流で島を視察した昨夏の話だ▼「目を見張ったのが大規模な水産加工の工場。ロシアの大企業が欧米の設備を導入し、缶詰や輸出用の養殖飼料を製造している」。働き手は若い世代。政府が収入や子育て環境の好待遇で本土から移住を進める▼島は旧ソ連崩壊後の経済破綻で困窮し、24年前の北海道東方沖地震でも被災。住民は日本の助けを求め「返還賛成」に傾いたという。「だが今の状況は変わったようだ」と濱田さん。22日には北方領土が焦点の日ロ首脳会談がある。どんな話し合いになるか▼4島などの元島民たちは戦後、千島連盟を結成して早期返還を訴えてきた。高齢になり、多くの人が望郷の念とともに他界した。引き裂かれる思いで島影を眺め続けた人々に、少しでも進展の報を届けたい。(2019.1.22)