3階の教室に転がったままの車。散乱する机、椅子、教科書。気仙沼市が3月10日から震災遺構として公開する気仙沼向洋高旧校舎は、津波の脅威をまざまざと伝える。併設の伝承館で上映する記録映像も、ずしりと重い▼津波発生から火災鎮火までを伝える13分の映像は市民の声が生々しい。「家がなくなった」「ここも危ない」。ため息と悲鳴が交錯する。市内の階上中卒業式の映像は、津波で仲間を亡くした梶原裕太さんの答辞がノーカットで流れる。「天を恨まず、運命に耐え、助け合って生きていくことが、これからの私たちの使命」。涙あふれても、背を反らせ、上を向いて言葉をつなぐ。見ていて胸が詰まった▼施設は初年度に1500万円の赤字が見込まれ、その後の収支に懸念の声がある。元の校庭に地元建設会社が整備するパークゴルフ場についても「調和しない」と反対があった▼それでも市は残すと決めた。「赤字でも使命」と強調する。大勢の人が集まるパークゴルフ場は、遺構の入場者増につながると説く▼遺構保存を回避する自治体もある中、使命を持続可能にするために、市には今後も工夫が求められる。市民も然り。行政任せにせず、一人一人が発信者となり、救える命を救おう。それが梶原さんの言う使命である。(2019.1.27)