歌舞伎女形の故四代目中村雀右衛門さんは、90歳近くまで舞台に立った。晩年もお姫さまを演じた。足が悪くなっても色気は衰えない。みずみずしい芸風で人気を博した▼中村さんは内面の美を大事にした。「うまく芝居をしても、心のないものはしょせんそこまで。赤でも黄色でも紫でも、その色の心が表現できた時にいい役者になれる」。心のある芝居は輝きを放つと説いた(堀越一寿編著『歌舞伎四〇〇年の言葉』)▼心が大切なのはスポーツも同じ。技術、体力に強い精神力が加わって一流になる。テニスの全豪オープンを初制覇し、四大大会2連勝を飾った大坂なおみ選手を見てそう思った▼パワーとスピードは世界トップ級。課題は精神面のもろさだった。全豪オープンは違った。決勝のピンチの場面。心が折れそうになっても気持ちを切り替えて乗り切った。精神的な成長は、コーチのサーシャ・バイン氏の存在が大きいらしい。完璧主義の大坂選手に、できないことではなく、できることに目を向けるように指導してきたという▼大会中、「私の精神年齢も3歳から4歳になった」と冗談で語った大坂選手。きのう世界ランク1位になった。21歳の千両役者はどこまで進化するのか。今後も大舞台でたくさんの夢を見せてくれるに違いない。(2019.1.29)