「ならぬことはならぬ」。NHK大河ドラマ『八重の桜』で全国的に有名になった会津の教えである。会津藩が子どもに覚えさせた「什(じゅう)の掟(おきて)」の一文。人として守るべき七つの戒めからなり、地元では今もその精神が受け継がれる▼作家の中村彰彦さんは著書『会津武士道』でこう述べる。「親も先生も『人を殺したら何で悪いんですか?』と聞かれると絶句するという。これは絶対おかしい。『ならぬことはならぬ』と言わなければいけない」▼「ならぬこと」の最たる例だろう。児童虐待である。千葉県野田市の小学4年生栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅浴室で死亡し、父親が傷害容疑で逮捕される事件が起きた▼耳を疑ったのは、市教委の対応である。心愛さんが「お父さんにぼう力を受けています」と訴えた学校アンケートのコピーを父親に渡していた。虐待がひどくなる可能性があったのに、職員が父親に恐怖を感じて渡したという。心愛さんはその後の1年間、どんなに恐怖におびえたことか▼児童虐待が発覚するたびに関係機関の連携不足が指摘される。子どもの命は何より尊い。大切な命を守るため社会を挙げて本気で取り組まなければ、悲劇はなくならない。什の掟には「弱い者をいじめてはなりませぬ」とある。ならぬことはならぬ、である。(2019.2.2)