「檀(だん)信徒の7割が被災し、家屋は一瞬で流失、焼失。墓石も痛ましい姿になった」。石巻市門脇町の西光寺で11日にあった東日本大震災の追悼法要。遺族たちに樋口伸生副住職(56)が語った。檀家の犠牲者は172人を数えるが、祈ることで「必ず蓮(はす)の花の世界で再会できる」▼西光寺も津波と大量のがれきの流入で被災した中、樋口さんは枕経に歩いた。震災から8年が過ぎても、愛する人々を亡くした遺族は「悲しさは癒えることがない」と口をそろえる▼わが子を津波で失った女性らが毎月、西光寺で語り合いの集い「蓮の会」を催す。ある母親は、すべてを奪われたような苦しみのさなか、枕経での「また会える」との言葉に力づけられたという。「宗門の教えだが、救いというものがこれほど求められる時はない」と樋口さん▼弟で仙台市宮城野区の慈恩寺の樋口法生住職(49)は、やはり津波で流失した市内の寺の檀家を支援し、八十柱の犠牲者の遺骨を預かって供養した。8年の間にそれぞれ墓に納められた後も、一柱だけ引き取られぬまま残る▼「震災は終わっていないということ。亡くなった人にも生きる人にも」。慈恩寺でも、津波で家族を失った遺族のための法話会を開いており、いつも十数人が集う。誰にもまた祈りの1年が始まった。(2019.3.13)