米沢藩主の上杉家には多くの名刀が伝わる。藩祖の上杉謙信とともに愛刀家として知られたのが、養子の初代藩主上杉景勝。優れた鑑識眼を持ち、目録を記した。所有した刀の曲線美は今も見る人を魅了する▼感情を表に出さなかったという逸話が残る景勝。同じ名前の若武者もどこか似ている。大相撲で大関昇進を確実にした貴景勝関である。闘争心あふれる相撲とは対照的に、勝っても負けても表情を変えない。「相手に失礼。勝っておごらずという日本の武士道の精神です」と語る▼貴景勝の「貴」は入門時の師匠、元貴乃花親方から受け継いだ。「平成の大横綱」の元親方が謙信を尊敬していたことから、謙信の後継者である景勝の名前を付けた。今場所で見せた強い精神力は元親方譲りだろう▼身長175センチ。武器は強烈な突き押し。鋭い出足からの突き、押しの速攻で体が大きい力士を土俵際まで追い込む。押すだけではない。相手を冷静に見ていなすこともある。鋭さと柔軟性。それは切れ味鋭く、簡単には折れない名刀の条件でもある▼本名は佐藤貴信。名前は父親が好きな貴乃花と織田信長にちなんだという。天下人の信長のように、貴景勝関も相撲界の天下を目指す。幕内最年少の22歳。失敗を恐れず、前へ、前へと進み続けてほしい。(2019.3.26)