漫画「釣りキチ三平」が世に出たのは1973年。高度経済成長期が終焉(しゅうえん)を迎えた昭和48年だった。大自然に溶け込み釣りの醍醐味(だいごみ)を伝える主人公の少年三平三平(みひらさんぺい)らが紡ぐ物語が人々の心に響き、少年漫画雑誌の連載は10年続いた▼作者の矢口高雄さん(79)は横手市増田町の出身。増田の中心部から20キロほど離れた山あいの狙半内(さるはんない)集落で生まれ育った。自然や古里を主題とした作品で広い支持を得た矢口さんの原点は狙半内にある▼平成になると漫画の奥深さを連携して発信する模索が東北で動きだす。「サイボーグ009」などを手掛けた故石ノ森章太郎さんの出身地の登米市、石ノ森萬画館がある石巻市、そして増田町が「みちのくマンガロード連絡協議会」を2001年に設立。遠野市も加わった▼矢口さんの故郷、増田町には1995年開館の増田まんが美術館がある。設立当時、漫画を主題にした美術館は珍しかった。日本の漫画文化をけん引するミュージアムと言っていいかもしれない▼増田まんが美術館は内容をぐんと充実させるため2年前から休館しリニューアルオープンを準備してきた。いよいよ迫る再開館日は元号が令和に切り替わる5月1日。昭和後期の釣りキチ三平から平成へと脈々と刻んできた横手の漫画史も次の扉を開く。(2019.4.7)