桜やレンギョウ、ハナモモなど多様な花木が山を鮮やかな春色に染める。写真家の故秋山庄太郎さんが「福島に桃源郷あり」と絶賛した福島市の花見山公園が見頃を迎えた▼年間20万人近くが訪れる花の名所は私設の公園だ。地元の花卉(かき)農家阿部伊勢治郎さん、一郎さん親子(ともに故人)が1959年、「花を自分たちだけで楽しむのはもったいない」と入園料なしで一般公開を始めた。今年は開園からちょうど60年▼平成から令和へと元号が変わる年に節目を迎えた。ここ数年は来園者の減少傾向が続いたが、「今年は例年より多い。タイをはじめ外国人の観光客も増えています」と福島市の観光担当者▼<花見山ゆめのようなる花の名をはべらせてわがみちのくはあり>。福島市出身の歌人駒田晶子さんがこの公園を歌っている。同じく福島県人の本田一弘さんは本紙『うたの泉』でこの短歌を「故郷賛歌であると同時に、東北賛歌でもあります」と称賛していた▼花見山公園には地元の高校生がパンジーで描いた「60」の花壇があるくらいで、特に記念行事の予定はない。「今まで通り、お客さんを迎え入れていくだけ」。3代目の一夫さん(67)ら阿部さん一家に気負いはない。積み重ねの節目を大事にする花卉農家の志が美しさの源にある。(2019.4.17)