インド北部アグラにある霊廟(れいびょう)タージマハルは貴婦人にたとえられる。17世紀、ムガール帝国の皇帝が先立った愛妃のために建てた。左右対称、総大理石造りで神秘的な白亜の宮殿に見える。インド・イスラム文化の頂点に位置する名作である▼タージマハルの建設からはるかにさかのぼった5世紀中頃、日本でも巨大な白亜の墓が造られたという。堺市の仁徳天皇陵古墳である。考古学者の石野博信氏は、葺石(ふきいし)で覆われた墳丘や石敷きの堤が陽光で白く輝き、海上から見えたと推測する。「大陸からの使節の度肝を抜いたのでは」▼当時は朝鮮半島で高句麗や新羅、百済が台頭し、アジアで緊張が高まった時代。仁徳天皇陵は権力誇示のため造られたのか。仁徳天皇の墓ではないとの説も有力で誰の墓かを含め謎めく▼仁徳天皇陵古墳を含む大阪府南部の「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)が世界文化遺産に登録するよう勧告した。仁徳天皇陵はピラミッドに匹敵する世界最大規模の墓。登録を契機に世界からもっと注目されるといい▼日本が誇る遺産といえば、縄文遺跡も忘れてはいけない。北海道と青森、岩手、秋田4道県の縄文遺跡群も登録を目指す。仁徳天皇陵と同様、こちらも謎がいっぱい。だからこそ魅力が尽きない。(2019.5.15)