湯の香が恋しい。心地よい汗をかいた後で源泉掛け流しの温泉に漬かりたい。思い立って、大崎市の鳴子温泉地区に先月オープンした「オルレ」を訪ねた。韓国・済州島発祥のトレッキングコースである▼スタートは鳴子峡のレストハウス。盛りを迎えた紅葉と奇岩が織りなす風景の中に身を置き、マイナスイオンを胸いっぱい吸い込んで、さあ、歩き始めよう。進む道はカンセという馬のオブジェが教えてくれる▼国道を横切り、トチやシイ、ブナなどが茂る遊歩道へ。谷底へ下り、また上るつづら折りの道だが、歩きづらさは感じない。分岐点に矢印、迷いそうな場所にはリボンが取り付けてあり、道を間違うことはない▼コースの延長はおよそ10キロ。松尾芭蕉が「おくのほそ道」で歩いた国境越えの険路を逆にたどる、3時間半の小さな旅だ。「尿前の関」で山道は終わり、民家が現れる。人里へ下りた安心感で体がほぐれてゆく▼ところで、地元の人はどう思っているのだろう。「迷惑なことなんて一つもないよ」。コース脇の畑を耕している大槻久美子さん(75)が言う。「9月は韓国の人も大勢来たけど、みんな明るくて、礼儀正しかったな」。国と国とのもめ事も、ここでは関係ないようだ。ほほ笑みに見送られて、温泉街のゴールを目指した。(2019.11.4)