神奈川県出身の城健史さん(40)は東北の田舎暮らしにどっぷり漬かっている。東京、広島、北海道などを経て福島県檜枝岐村の地域おこし協力隊になったのが5年ほど前。2年前に隊員を卒業してからは尾瀬国立公園などを案内するガイドとして活動する▼「自然や歴史に囲まれた環境で暮らしたい」と移住しただけに「田舎の文化」を大事にする。ガイドの仕事が減る秋から冬には、地元に伝わる「曲げわっぱ」作りにいそしみ、ガイドの繁忙期と重なる6~7月も、天ぷらなどの郷土料理になるサンショウウオ漁のため、時間を見つけて沢を登る▼東日本大震災から9年。幾多の命と暮らしを奪った大津波と原発事故が突き付けたのは何だったのか。安全が当たり前と過信し、原子力など科学に漫然と依存する。そんな暮らしのありようが問われていたことを忘れかけてはいないだろうか▼檜枝岐のサンショウウオ漁には、漁師一人一人が大事にする決まりがある。仕掛けに入る雄と雌が半々になったら、その年の漁を終える。遅れて活動する雌を守り、沢の恵みを来年につなげるためという▼人口約550の小さな村に息づくのは東北各地にまだ残っているだろう「足るを知る」文化だ。そんな本来の暮らしぶりの大切さを改めてかみしめたい。(2020.3.8)