日本は1980年、モスクワ五輪をボイコットした。ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議した米国が不参加を促したのに追随した。政治に翻弄(ほんろう)された選手たちは「幻の代表」と呼ばれた▼新型コロナウイルスの感染拡大で、19日に始まる予定だった選抜高校野球大会が中止となった。東日本大震災があった2011年も「全国の人々の一筋の光になる」と開催した国民的行事。戦時中の中断を除き、中止になるのは初めてである▼日本高野連は無観客での開催を模索した。が、感染拡大が収まらない上に、安倍晋三首相がイベント自粛の延長を求めていた。3月に計画された他競技の全国大会は全て取りやめ。開催の余地は残っていなかった▼中止発表は3月11日。震災9年の節目と重なったことに、磐城(福島)の木村保監督は「困難を克服し、強くならないといけないと受け止める」と話した。無念さは痛いほど分かる▼幻の代表は昨年12月、初めて一堂に集まった。自らも柔道代表だった日本オリンピック委員会の山下泰裕会長は「胸を張って『代表だった』と言えるようになれば」とあいさつしたという。夢破れた球児たちへ。甲子園出場を勝ち取った努力までが幻になったわけではない。思う存分泣いたら切り替えて、夏の大会を目指してほしい。(2020.3.13)