架空の日本の首相が演説する。世界平和のため全世界で同時に鎖国すべきだと訴える。「私はチョコレートが好きです。鎖国したら食べられません。でも我慢します。あんこだけを食べます」▼現代美術家会田誠さんの映像作品『国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ』(2014年)である。中で、男は「グローバリズムは悪の思想で、強い国が弱い国から搾取する」と鎖国の必要性を強調する。荒唐無稽だが、風刺が効いた作品だった▼現実世界でも、各国が鎖国のように人の往来を断つ政策を取り始めた。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を表明したのを受け、米国は欧州からの入国を30日間禁止した▼グローバル化の負の側面といえようか。国境を越えて活動する人々の増加によって感染は一気に世界中に拡大した。株価は暴落。イベント中止、学校休校など各国で日本と同様のことが起きている▼日本はイタリアや韓国のように爆発的感染に至っていないが、そもそも検査数が少ない。「判明した感染者は氷山の一角」とみる専門家もおり、気は緩められない。まだまだ分からないことばかり。今は世界の英知を集めて闘うしかない。グローバリズムの真価が問われている。(2020.3.14)