処分を受けて役職を辞任した後は再就職もせず、ひっそり暮らしていたらしい。このまま世間が忘れ去ってくれれば、と願っていたのかもしれない▼学校法人「森友学園」への国有地売却の決裁文書改ざんが発覚したのは2年前。安倍晋三首相夫人や政治家の名前を削除し、学園との交渉記録は廃棄した。主導したのが佐川宣寿元国税庁長官だ。関係者は処分されたが、大阪地検特捜部は全員不起訴として捜査を終えた▼この問題を担当していた財務省近畿財務局の男性職員が命を絶った。理財局長だった佐川氏の指示で改ざんを強制され自殺に追い込まれたと、妻が国と佐川氏に損害賠償を求める訴えを起こした▼職員の手記や遺書が残る。幹部が「元の調書が書き過ぎているんだよ」と言い放って改ざんしたことなどを生々しく伝える。遺書に「これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」とある。何とも痛ましい▼佐川氏は国会に証人喚問されたが、捜査を盾に詳しい説明を拒否した。手記は具体的にどこを改ざんしたかに触れていない。政府は「新しい事実はない」として再調査をしないという。職員は「関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました」とも記す。佐川氏がかみしめるべき言葉だろう。(2020.3.21)