「今の日本はあなたが世界に見せたい日本ですか」。1940年東京五輪招致の中心人物だった嘉納治五郎に主人公の一人、田畑政治が問う。昨年放送されたNHK大河ドラマ「いだてん」の一場面である▼日中戦争が泥沼化し、日本は世界で孤立していた。田畑は嘉納に五輪の返上を迫った。軍部の反対もあって五輪は幻に終わり、嘉納の夢が実現するのは64年まで待たなければならなかったのはご承知の通り▼東京五輪・パラリンピックが新型コロナウイルスの感染拡大のため1年程度延期されることが決まった。まん延を止め切れない日本、何よりパンデミック(世界的大流行)が起きている現状ではやむを得まい。中止という最悪の事態は避けられたと考えるしかない▼福島県できょう始まる予定だった聖火リレーも中止になった。五輪の日程が確定し次第、来年改めて行うというが、東京電力福島第1原発事故で苦しむ古里を元気づけようと心待ちにしていたランナーの胸の内はどんなにやるせないことか▼2年延期すれば選手への影響が大き過ぎる。1年はぎりぎりの選択だったろう。ただ、流行抑止の面でリスクは負う。世界はともかく、国内の終息に全力を尽くさなければなるまい。胸を張って「今の日本を見てください」と言えるように。(2020.3.26)