昨季、同じ人間とは思えない結果を連発する日本人に世界が驚いた。ドイツの雑誌は「鳥人」と呼び、新聞は「宇宙人」とまで書いた。スキージャンプ男子のワールドカップ(W杯)で日本人初の個人総合優勝を果たした小林陵侑(りょうゆう)選手(八幡平市出身)のことだ▼28戦で13勝、史上3人目となる全勝でのジャンプ週間制覇、歴代最多に並ぶ6連勝…。まさにぶっちぎりの強さ。冒頭の呼称が付くのも納得できよう。今季も世界トップレベルの力を示し、3勝を挙げて3位に食い込んだ▼状態は万全でなかった。序盤戦は腰痛に悩まされ、助走の滑りや空中での姿勢が不安定に。昨季王者にかかる重圧も相当だったよう。各国メディアからの取材も増え、無意識のうちに負担になっていたという▼「苦しんだにしろ、いいシーズンだった」と小林陵選手。全盛期の船木和喜選手、葛西紀明選手でさえ届かなかった個人総合のタイトルを22歳の若さで手にし、翌年もきっちり結果を出した自信がうかがえる▼以前、語っていた言葉が印象深い。「日本ではジャンプが盛んではない。サッカーのネイマール選手、野球の大谷翔平選手(奥州市出身)のようになっていきたい」。しっかり見据えているのだろう。自身の活躍で広がる、その先のジャンプ競技の姿を。(2020.3.29)