購入した本に掛けてくれるブックカバーに、本店がある盛岡市の大通商店街の昔の地図が描かれている。「わたしは、わたしの住む街を愛したい 手あかにまみれた一冊の本のように。」のメッセージも。本や街への愛着が伝わる▼店の名をさわや書店という。本好きならぴんとくるだろう。店員が店頭の本に添える宣伝文「手書きポップ」で知られた。最初に手掛けたのが元本店店長の伊藤清彦さんである▼出版社や出版取次大手も一目置くカリスマ店長だった。ポップがきっかけで全国に知られた本も少なくない。絶版寸前からベストセラーとなり、映画化もされた小説『天国の本屋』もその一冊▼本の目利きとしてならし、大型店とはひと味違う売り場づくりをした。書店の潜在能力を高めるためには「本を読んで内容を知ることに尽きる」と語った。退社後は古里・一関市の一関図書館副館長として市民と本をつなぐ仕事に携わっていた▼本が売れなくなったと言われて久しい。「街の本屋さん」が次々と閉店に追い込まれている。伊藤さんが亡くなった。65歳。今こそ読書の楽しさを広める伝道師が必要なのに。「小売業の中で書店はまだまだ個人の知を生かせる職業。頑張って」。伊藤さんのエールを、苦境にある書店員さんたちに送りたい。(2020.4.4)