豪雨災害が多発する中、「田んぼダム」が注目を集めている。排水口に専用器具を設置し、水田にたまる雨水をゆっくり流すことで川の負担を軽くできる。新潟県央の平野部にある見附市は先進地として名高い▼かつて洪水の常襲地だった。2010年度以降、市が器具を買って1200ヘクタールの水田に2500本設置した。一つ3000円で総額750万円と安価で済んだ。川の治水事業と組み合わせ、試算では市内のほぼ100%が床上浸水を免れるという▼事業を支援する新潟大の吉川夏樹准教授(農業水利学)が3月下旬、大崎市内で講演した。重要なのは、あぜや水路の保全だ。国の交付金を使って集落単位で行うのが一般的だが、過疎化や高齢化が進む中山間地では人手が足りない▼「見附市の場合、市内の全65集落に呼び掛けて広域協定を結び、交付金の受け皿を一元化した」と吉川氏。あぜを補修する農家に1メートル当たり50円、草刈りなら1アール100円を支払う。元気な農家グループが高齢者の田んぼまで引き受けるので長続きする可能性が高い▼昨年10月の台風19号豪雨によって大きな被害を受けた大崎市は導入に前向きだ。都市部では農地転用、中山間地では耕作放棄地が目立つ現代。川の流域全体で力を合わせ、水田の役割を高めたい。(2020.4.5)