東京電力福島第1原発事故の直後、福島市の詩人和合亮一さんがツイッターに短い詩を投稿した。<放射能が降っています。静かな夜です>。妻子を県外に避難させ、市内に残った。怒り、悲しみが言葉になってあふれた▼投稿は夜中の日付が変わるまで続き、反響を呼ぶ。この時、最後に投稿した一文が<明けない夜は無い>。新型コロナウイルスの感染拡大が続く今、同じ言葉が批判を浴びる。発言者は文化庁の宮田亮平長官である▼問題になったのは文化イベントの自粛で打撃を受ける芸術家らを励ます先月27日の声明。長官は「明けない夜はありません! 文化の力を信じ、共に前に進みましょう」と訴えたが、休業補償などの具体的支援策には言及せず、批判が噴出した▼音楽、演劇などが公演中止になり、生きる危機に直面している人もいるという。そんな中で長官が強調したのは精神論だけ。反発が出るのも無理はない。新型コロナ対策で文化、芸術に手厚い支援策を打ち出したドイツや英国とはかなり差がある▼9年前の和合さんの言葉は人々の心に響いた。同じ言葉でも使う人によって重みが違う。和合さんは言葉の中に真実があると信じ、心の叫びをつづった。そこには切実で真剣な思いがあった。宮田長官に欠けているものは何だろう。(2020.4.6)