米株式市場で先月、アップル株の時価総額が一時、2兆ドル(約212兆円)を突破した。新型コロナウイルスの流行による巣ごもり需要、デジタル化が追い風という。米企業が2兆ドルに届いたのはアップルが初めてだ▼75年前のアップルは届かなかった。終戦の前日、130機超の米爆撃機B29がマリアナ諸島を飛び立った。攻撃目標は国内最大の産油地だった秋田市土崎地区。日本の敗戦は濃厚で搭乗員は直前まで本当に爆撃するか指示を待ち続けた。作戦中止の暗号名がアップルだった▼秋田ケーブルテレビ制作の特別番組「『アップル』は届かず」は、搭乗員の遺族の証言や公開された米公文書から、なぜ終戦直前に土崎空襲が行われたのかを探る▼番組では出撃時、既に日本のポツダム宣言受諾方針が米本土に伝えられ、祝賀ムードの米国民の様子を紹介。「空襲には米陸軍の下部組織だった空軍の野心と、直前に対日参戦した旧ソ連の侵攻を防ぐ狙いがあった」と推論する▼「もう1日早く終戦を迎えていれば」。土崎港被爆市民会議のイベントで上映された番組を見た市民はつくづく語る。米空軍の組織の論理や大国の思惑が交錯する中、日本政府の判断の遅れが250人以上の犠牲を生んだ。その無念さは75年を経ても消えることはない。(2020.9.1)