ドードーという鳥がルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に登場する。かつて実在した鳥で大きさは七面鳥ほど。全く飛べなくて、歩くのも下手。生息地は主にモーリシャス島。17世紀に絶滅したという▼動物に詳しい畑正憲さんが著書の『ムツゴロウ世界動物紀行』の中で「その姿を見られたらどんなに胸がときめくだろう」と絶滅を嘆いていた。島に来た水夫らの乱獲に加え、持ち込んだ豚が野生化して卵やひなを食いあさった▼モーリシャスはドードー絶滅という悲劇の記憶が残る島でもある。その島をまた、あぜんとするような悲劇が襲っている。日本の貨物船が航路から大きく外れて浅瀬で座礁し、燃料の重油が大量に流出した。海岸が重油まみれだ▼畑さんが「どうしてこうも美しいのだろう」と、ため息をつくように描写した海の情景が一変した。マングローブが茂る海岸は漂着した重油で汚れ、サンゴ礁が危機にひんしているともいう。漁もできない。重油の除去は、果たして▼不運にもコロナ禍のために、除去する機材の空輸が難航している。現地では住民が特産のサトウキビの葉を束にして、重油をかき集めているそうだ。日本からは環境保護の専門家たちも行っている。手を尽くして自然豊かな楽園を元通りにしなければ。(2020.9.2)