近眼で眼鏡を掛け、小学生なのに年寄りじみている。家庭や学校の出来事を早口でしゃべり、時には大人をドキリとさせる。1980年代、東京の小劇場で「山田のぼる」と名乗る風変わりなキャラクターが人気を集めた▼生みの親は大崎市出身の高泉淳子さん。早大卒業後、劇団を立ち上げ、自ら台本を書いて演じた山田少年は、核家族化の中で誰もが抱く孤独を象徴した。「ランドセルを背負わせたら日本一」と称され、高齢者まで多彩な役を演じ分けた▼劇団解散後、歌手としても活動。芝居と音楽を組み合わせた「ア・ラ・カルト」公演などを展開してきた。大崎市で9月末に行う音楽ライブを準備するため里帰りした高泉さん。コロナ禍の影響を聞くと、意外な答えが返った。「この問題以前から演劇界は危機的なのです」▼志を持つ若手が活動できる小劇場が激減し、才能を見いだす評論家や演劇ファンの影が薄いという。かつて高泉さんらにも出演の機会があった大劇場は、アイドルなどを主役とする商業演劇に特化する▼「このままでは若者たちの才能をつぶしてしまう。一方、若手演劇人も本を読んだり、伝統文化を学んだりといった素養が足りない」。大人になった「山田少年」の厳しい直言。コロナ問題とは別に再考の必要がある。(2020.9.6)