深作欣二監督の映画『仁義なき戦い』シリーズは強烈な個性の猛者たちがスクリーンを彩る。その中で異彩を放つのが、菅原文太さんが演じた主人公らを配下に置くやくざの組長。金子信雄さんの熱演もあり、ファンの間では今も人気が高い▼虚勢を張る一方で、子分から突き上げを食うと泣き落としにかかる。保身のためなら仲間同士の裏切りを仕向ける非情さも。老練で、手練手管にたける点では他の追随を許さない▼老練なのは、きょう告示される自民党総裁選における二階俊博幹事長もそう。安倍晋三首相の退陣表明を受け、真っ先に菅義偉官房長官の擁立に動いて菅氏有利の流れをつくった。政治の空白は許されないとの名分を掲げて党員投票を省略し、地方の人気が高い石破茂元幹事長を不利な立場に追い込んだ▼党員投票の実施を求めた若手議員の代表は党総務会終了後、「負けました」とあっさり白旗を揚げた。事の善しあしは別にして、幾多の修羅場をくぐってきた二階氏と、役者の格が違った感は否めない▼今回の総裁候補選びでは、安倍路線の継承が軸だったとはいえ、若手の存在感は希薄だった。「安倍1強」体制で派閥の力がそがれ、党内の権力闘争とは無縁だったせいなのか。そろそろ、「チルドレン」から卒業しないと。(2020.9.8)