江戸時代後期の思想家に佐藤信淵(のぶひろ)という人がいる。世を治め民を救うという意味の「経世済民」から「経済学」という名称を発案したという。著作に『経済要録』があり、これは日本初の経済に関する教科書とされる▼創業、開物、富国、垂統の四つを最重要の経済政策として掲げている。開物とは人知の開発、垂統は伝統の子孫への承継だが、ここでは幕府による資金の調達などを意味した。経世済民のためには経済成長が欠かせないと説いた▼きのう新内閣が発足した。メンバーの顔ぶれを見ると、安定感のある印象を受ける半面、派閥均衡と論功行賞の典型にも見える。一抹の不安は残るが、まずは職務に全力を尽くしてもらいたい。当面の使命は明確だからだ▼言うまでもなく、その使命とは経済の再生と新型コロナ感染症の沈静化。感染症の拡大で国内総生産(GDP)は急速にしぼんだ。コロナ倒産と解雇が地域をむしばんでいる。大型の減税をはじめとする思い切った政策が急がれよう▼冒頭に紹介した佐藤信淵は、英国の著名な経済学者にちなんで「日本のケインズ」ともいわれる。生まれは秋田県羽後町。菅首相の故郷湯沢市の隣町だ。社会の諸問題の根底には経済があるという郷里の偉人の主張は、菅さんはよくご存じに違いない。(2020.9.17)