9月の高く澄んだ空を見上げると、十数年前に訪ねた南の島を思い出す。オーストラリアとパプアニューギニアを経由し、ほぼ1日がかりでたどり着いた▼島の名はガダルカナル。5336平方キロの面積は東京都のおよそ2.5倍。ソロモン海の波は小石の浜を静かに洗い、うろこ雲を浮かべた朝の空はプラチナに輝いていた。この島の風光に、詩人の吉田嘉七(1918~97年)は「よみの色」を見ていた▼島の北岸にある飛行場の争奪を巡り、太平洋戦争最大級の激戦が展開された。宮城、福岡両県と北海道の将兵で編成された部隊が総攻撃をかけたのが、1942年9月中旬。米軍の圧倒的な火力の前に屈し、補給を断たれた戦線は飢餓に陥ってゆく▼吉田は歩兵第二師団の主計下士官として、ガダルカナルに上陸した。幽鬼のような将兵が彼に食を乞う。しかし、補給所には一粒のコメもない。吉田はため息をつく。<この島は海のはて 極れば燃ゆべき花も無し。山青くよみの色、海青くよみのいろ>▼ガ島の戦没者は2万人を超す。秋を迎えても、戦争の犠牲者を悼み、平和を祈るべき「戦後75年」はまだまだ続く。文学作品を通じ、その思いを深めるのもいい。吉田の「ガダルカナル戦詩集」はすでに絶版だが、図書館で読むことはできる。(2020.9.18)