大相撲には「江戸の大関より土地の三段目」という言葉がある。出世すれば「郷土の誇り」となるだけに、出身地をないがしろにできない。稀勢の里が横綱に昇進した際、その出身地を巡って明暗が分かれた▼幼少時に兵庫県芦屋市から茨城県龍ケ崎市へ。中学2年の時に隣の牛久市に移ったが、龍ケ崎市の中学を卒業後、角界入りした。過ごした時間は龍ケ崎市の方が長かったものの、本人が相撲協会に届け出た出身地は牛久市。祝賀パレードが行われるなど沸く一方で、龍ケ崎市民の思いは複雑だった▼こちらも、出身地がちょっとした話題になっている。菅義偉首相。湯沢市生まれだが、首相官邸ホームページの歴代内閣コーナーにある首相プロフィル欄には「神奈川県出身」と記されるという▼この場合の出身地は、戦前は選挙を経ていない首相がいたため出生地なのに対し、戦後は民主的な選挙が実施されているため選挙区のある都道府県なのだとか。正直、分かりづらい。秋田県民は納得がいかないだろう▼菅首相は自民党総裁選で「雪深い秋田の農家の長男」を強調した。この際、内閣情報室は新首相に「忖度(そんたく)」して掲載基準の変更を検討してはいかが。歴代内閣コーナーに載るのは総辞職後。よほどの短命内閣でない限り、時間はある。(2020.9.19)