世の中には「空気」というものがあって、ある辞書は「周囲の気分や習慣、雰囲気」などと説明している。空気について探求した山本七平著『空気の研究』は「まことに大きな絶対権をもった妖怪である」と言う▼最悪の例が大戦末期の戦艦大和の悲劇。出撃は無謀で無意味なのに、出撃か否かを決める会議は、出撃の空気に誰も反対できなかった。結末は周知の通り。では、空気に抗するには? 同書は「水を差す」ことを挙げている▼その水とは前例やその場の雰囲気にとらわれない常識の意味だろう。さまざまな物事を改めて常識で見直せば、身近にも再考すべき課題は多くありそう。結論が決まっている行政の審議会、上役の顔色をうかがっている会社の名ばかり会議…▼「前例主義、既得権、権威主義の最たるものだ。こんなものはさっさとやめたらいい」。閣僚の就任会見に関して、河野太郎行政改革担当相が述べた。組閣後に官邸で順番に記者会見する慣行があり、河野さんの番は未明に及んだ。怒りはごもっとも▼先陣を切って、河野さんには世にはびこる無駄を改革していってもらいたいと思う。ただし「前例主義、既得権、権威主義」でまず思い浮かぶのは、族議員や中央省庁。何よりも権益を守ろうとする「空気」にたっぷり「水」を。(2020.9.20)