米国の著名な社会心理学者にゴードン・オルポート(1897~1967年)という人がいる。うわさが社会の中でどういうふうな広がり方をするかを研究し、その定式化を試みた▼それによると、うわさの流布は「情報の重要さ」と「情報の曖昧さ」の二つを掛け算したものに比例するという。つまり、重要な情報の中身が曖昧であるほど、流言は広がってしまうということ。私たちの日常に照らしても、納得できる説明だ▼反対に、重要さと曖昧さのどちらかがゼロであれば、うわさは拡大しないとも言える。曖昧さを消すこと、常に正確な情報をできるだけ多くの人に伝えることが大事なのは、オルポートの法則からうかがえる教訓だ▼東京電力福島第1原発から出る処理水を海に放出する方針を政府が固めたという。漁業の風評被害を避けるために重要なのは、処理水が含むトリチウムに関する正確な情報だ。米国、英国、フランス、韓国など各国の原発でも海に流している▼「大阪湾で1発目を放出することが必要で、国からの要請があれば、協力すべきだと思う」と先日語ったのは大阪府の吉村洋文知事だ。多くの人が抱える不安を払拭(ふっしょく)し、風評被害を未然に防止するためにはそうした取り組みも大切だろう。福島だけが背負う理由はない。(2020.10.28)