「藪(やぶ)入り」は、住み込みの奉公人が、小正月やお盆に実家へ帰れる休日のこと。落語の『藪入り』では、久しぶりに帰宅する息子に好物を食べさせたい、好きな所へ連れていきたいと、はやる気持ちを抑えられない父親の姿が描かれる▼その思いは、コロナ禍で夏や秋にはかなわなかった、子どもや孫との再会を待ち望む親にも通じる。感染症対策として、年末年始休暇を1月11日まで延長するよう企業に要請する。西村康稔経済再生担当相の発言を、子や孫と離れて暮らす親は朗報と受け取ったことだろう▼だが、ここに来て波紋が広がっている。まずは教育現場。一斉休校の影響で授業時間の確保に苦慮していることから、萩生田光一文部科学相は学校に対して休みの延長や分散を一律で求めない考えを示した▼さらに自民党内からは、1月の通常国会の召集時期や衆院解散戦略に影響を与えかねないとの反発が。西村氏の発言が11日までの連続休暇と独り歩きしたことに加え、党への根回しも不足していたようだ▼政府のコロナを巡るちぐはぐな対応がまたしても、といったところか。「一律の休みではない」などと後で言われても、『藪入り』の父親のように、子や孫へのもてなしをあれこれと思い描いていた人にとっては、しゃれにならない。(2020.10.29)