今から半世紀以上も昔は、仙台から上野まで特急列車で7時間もかかったらしい。用もないのに汽車に乗るのが大好きだった作家の内田百〓が紀行文『阿房列車』などにつづっている▼「仙台から帰って来る時、仙台上野間七時間の内、四時間半食堂車にいた事がある。上野に着く間際まで杯を離さなかった。ああいう事は甚だいけない。食堂車はお酒を飲みに行く所ではない」。のんびりと、どことなくユーモラスな列車の旅▼特急の時代から主力が新幹線の時代に変わって、仙台-東京は一番速い列車でわずかに1時間半。乗って車内誌を拾い読みするうちに着いてしまうような感覚だ。その新幹線がもっと速くなるという。JR東日本が開発している次世代新幹線だ▼新型車両「ALFA-X(アルファエックス)」の試験走行が先日、報道関係者に初めて公開された。深夜、週2回ほど仙台-新青森を走って安定性などを確認中だ。最高速度は400キロに達したこともあるそうだ▼列車と酒をこよなく愛し、死の間際までストローでシャンパンを飲んだという百〓。この新幹線に乗ったら目を丸くして大喜びしたに違いない。そして、日に何度も仙台-東京を往復し、杯を離さなかったのではないか。新型は2031年までの導入が目標という。(2020.10.30)

(注)〓は門構えに月