お寺の次男坊として生まれた故永六輔さんは「旅の坊主」を自称した。ライフワークのラジオ番組の合間に全国を巡り、その土地で見聞きしたことや出会った人のことをマイクの前で語った。電波が飛んでゆく先で話を聞き、そこで考えてスタジオへ戻ってくる。民俗学者宮本常一さんの教えを貫いた▼旅にまつわるもう一つのライフワークと言えるのが、1970年秋に始まったテレビの『遠くへ行きたい』。民放初の本格的な旅番組で、当初は番組名の冒頭に『六輔さすらいの旅』と付いた▼番組は、TBSを退社した俊英らが同年2月に設立した日本初の番組制作会社「テレビマンユニオン」が手掛けた。初回の演出を担当したのが、秋田市生まれの今野勉さん(84)。本年度の文化功労者に選ばれた▼テレビの世界に入って60年余り。70年代には、ドラマとドキュメンタリーを融合した「ドキュメンタリードラマ」や3時間ドラマなど、今や当たり前となったジャンルの番組を他者に先駆けて演出し、新たな地平を切り開いた▼「生」の臨場感に加え、一つの出来事を同時間に一斉に共有できる。テレビが持つそうした強みを信じてやまない。インターネットに押される中で、テレビにしかできない番組をいかに作るか。飽くなき挑戦の旅は続く。(2020.11.3)