フライオーバー・ステーツという言葉が米国にある。飛行機が飛び越す中部にある田舎の州。飛行機の乗客は東西の海岸部にある大都市のエリートたちだ。飛び越される側の田舎の労働者たちの逆襲が前回の結果を呼んだといわれる▼開票が続く米国の大統領選。フライオーバー・ステーツと並ぶ、もう一つのキーワードはラストベルト(さびた工業地帯)。工場労働者たちは労働組合を通じて民主党支持者が多いとされてきたが、前回は共和党支持が上回った▼共和党のトランプ氏と民主党のバイデン氏。歴史的なデッドヒートを演じながらも、どうやらバイデン氏が当選する気配が現段階では濃厚になってきた。予断は許さないが、ラストベルトを含む州などでもバイデン氏が健闘を見せている▼瀬戸際に立つトランプ陣営は、コロナ禍で導入された郵便投票の有効性を巡って法廷闘争に持ち込んだという。訴訟社会の米国の一断面を見る思いがする。双方が事実上の勝利宣言をするなど、異例ずくめの選挙はまだ結果が見通せない▼「ああ、時よ、このもつれ、ほぐすのはおまえ」という言葉がシェークスピアにある。大統領選のごたごたにはさっさとけりをつけて、分断が進んだ社会の再構築にもっと時間を-。そう願う米国民も多いだろうに。(2020.11.6)