仙台市青葉区で不動産業を営む菊地宏さん(84)が絵を始めたのは72歳の時だった。妻の京子さん(81)が所属する絵画教室のスケッチ旅行に同行し、イタリアに行った。帰国後、周囲の勧めで白い建物を描いた。旅行参加者の発表会を開くと、宏さんの絵だけが売れた。その後、絵に夢中になった▼絵画好きの夫妻が青葉区に「ギャラリー専」をオープンしたのが、東日本大震災があった2011年の夏。河北美術展などの展覧会が中止になり、画家たちが落ち込んでいた。発表の場をなくした人々を見て何とかしたいと思った▼サロンのように和気あいあいと楽しめる画廊を目指した。画廊経営は初めてとあって苦労の連続。展示が途切れないように多くの展覧会に出向き、作家に「画廊で展示しませんか?」と声を掛けた▼学生から重鎮まで、さまざまなジャンルの作家が展示会を開き、多くの人に親しまれた。高齢のため、年内の閉鎖を決断したが、来年1月から青葉区の晩翠画廊に経営を引き継いでもらうことになり、存続が決まった▼間もなく多忙な日々が終わる。京子さんは「いい10年間だった。今後は近場でもいいので、あちこちスケッチに出掛けたい」、宏さんは「来年は河北美術展に出したい」。一息ついた後、新たな人生が始まりそうだ。(2020.11.8)